所有される空、オープンアクセスの空
Generator:国家、民法、企業、ドローン、観察者
空の境界はどこから始まっているのか。空は私たちの視線のはるか先にあるのか、それとも頭のすぐ上からが空なのか。無形の広がりである空は物理的には分割不可能であるが、領土、領海と同様に領空なる概念が存在し、国家主権の及ぶ領域が法的に定められている。私たちが空を見上げるとき、領有の境界を実線として視認することはできないが、概念の上では確実にそれらの区画が存在するということだ。しかし、空には高度があるため、領空の具体的な定義についてはじつは解釈が割れている(大気圏までを権利の及ぶ範囲とする、航空機が飛行可能な範囲までを差すetc.)。つまり、空には複数の分割線・亀裂が未整理のままに走っているのである。また、民法においては土地所有者の権限が「法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定められており、土地の上空も含めて権利の及ぶ範囲とされている(ただし、上空何メートル、地下何メートルといった厳密な規定はない)。一見、無防備で開かれているように見えても、空はすでに誰かのものであるから、自由気ままに空を行き来することはできず、たとえば他人の土地の上空に無許可でドローンを飛ばすことは違法となる。この点に着目して、とある企業は上空シェアリングサービスを行う。上空シェアリングサービスとは、土地所有者がドローン操縦者に撮影や飛行訓練の場として上空を貸し出すサービスだ。企業のサイトを見ると、「新着の空」「人気の空」といった項目で土地所有者が貸し出す空のリストが商品のように並んでいる。しかし空は本来、誰もがいつでも鑑賞・体感できるオープンアクセスの共有材といった性格を備えているのではなかったか。私たちは空模様という日々展開される飽くなきショーを、天気予報といったガイドとともに楽しむことができる。