擬態

Mimicry
三葉虫の集合複眼
  • Intension
    環境を模して隠れること
  • Extension
    昆虫、植物、迷彩

たとえば、建築を建てることは大地の表面を覆い隠すことであり、壁画を描くことは壁を覆い隠すことでもある。植物の葉が日光を求めて大地の表層を奪い合うように、人間の制作活動もまた、物や場所の表層を覆って支配しようとするものだ。

しかし、キュビスムのコラージュには異なる可能性がある。ピカソやブラックが絵の上に貼り付けた「壁紙」は、絵の表層を覆い隠すだけではなく、絵がその下に覆い隠している「壁」を表象している。それは覆い隠された下層を浮き上がらせる表層だ。八王子の船田古墳では、古墳を埋め戻した地表に石室と円墳の形が描かれている。そこでは遺跡を覆い隠す表面が、下層の遺跡と削りさられた墳丘を明示している。隠すことと露呈させることの両義性を持ったこうした表面は、制作というものの新しい方法を示唆している。

例えば、皮膚の下の筋肉が描かれた服は、裸を隠蔽すると同時に裸が隠蔽しているものを露呈させ、まぶたの上に描かれた瞳は目を瞑ることで、見る瞳と見られる瞳を分離させる。


参考
・ジェネラル・ミュージアム|コレクション展「コラージュ、カムフラージュ」
・ジェネラル・ミュージアム|ツアー & カンファレンス 3「ミュージアムの発見」