Practices

スーパーマーケット

Supermarket

スーパーマーケットに通うこととは、近所の見知らぬ人々と大きな冷蔵庫をシェアすることだ。

引っ越しの多い私が1年前に越してきた三河島は、都内最古のコリアンタウンであり、今ではアジア全域からたくさんの移民が暮らしている。街を歩けば、日本語と同じくらい外国語が聞こえてくる。商店街も多文化で、一般的には日本人に馴染みのないお店も多い。私の住居に一番近いスーパーマーケットはハラル専用のお店である。バングラディッシュ人のオーナーが切り盛りするこのお店は、イスラム教において神に許された食材のみを販売する。

私たちは近所に用意されたお店を選び、そのお店に用意された商品から食べるものを選ぶ。住む場所が変われば通うお店も変わり、毎日食べるものも変化する。スーパーマーケットは私たちの日常を規定するともいえる。食べたいものを買いに行く、そんな私たちの日常的な行為は実のところ、ある種の強制と排除を含むかもしれない。つまり、スーパーマーケットを中心とした「私たち」の地域のなかに、その空間の様式に馴染まない「別の誰か」がいるとしたら?

本企画は、日本の一般的なスーパーマーケットに通う私が近所のハラルのお店に訪れ、お店や店主と交流することから始まった。この2日間は、私が店主と店頭に立ち、インスタントな展示やお茶なども介し、一つの空間のうちにいる他者同士の共有しえない共同プロジェクトの実践を試みる。

Site

ラマニアスーパーマーケット|東京都荒川区西日暮里1丁目2−10
Google Map

Generator/Organizer

ラマニアスーパーマーケット店主 ナシモさん、中島りか

Date

2023年7月29日(土)、30日(日)
14時–18時

Access

JR常磐線 三河島駅より徒歩4分
京成本線 新三河島駅より徒歩5分
JR山手線 西日暮里駅より徒歩13分

Document

スーパーマーケットのプロジェクトは、自分の自宅から一番近いお店「ラマニアスーパーマーケット」にて当時の店主であったナシモさんと一緒にお店で2日間働き、イスラム教のハラルのスーパーにおけるコミュニティを日本人のアートコミュニティがどのように介入することができるのかを考えようとした展示とイベントだった。

展示室となる店内には大きなモニターを設置し、ナシモさんにお店の店内について等、私が質問する姿をドキュメントした映像を流していた。言語の壁がある中で私とナシモさんが必死でジェスチャーを加えながら行ったインタビューは、いつも日頃お店に訪れる時と同じシチュエーションでありながら、映像を通して客観的に見ると、あべこべな内容ながらパフォーマティブな状況にも伺える。その他の展示では、お店で購入したものを展示として装飾したり、アーティストの友達がお菓子の袋の上にドローイングしたものを商品の棚に馴染ませて展示した。

イベント当日の二日間は思った以上に人が来て、ナシモさんが予想以上に興奮して喜んでいたことが印象に残る。私がアーティストでこのアートプロジェクトをこの場所でやらせて欲しいとお願いした時は、あっさり了承してくれたが、実際は私が何者なのか何を行いたいのか、当日まで分かっていなかったのだろう。私も実際何がどうなるのか当日になるまで予想できていなかったこともあり、お互いに“ノリ”があったという理由でこのイベントは実施されたと言っても過言ではないかも知れない。

オーディエンス/お客さんがこの展示イベントを通してどのような対応を取るのか私は予想していなかった。通常のアート展示では、作品が売られる状況がギャラリーなどではあるものの、一般的なオーディエンスの大半は買うことは手軽ではない。特に私は反資本主義的な視点から買わないと成り立たないアート鑑賞には少々批判的でもある。しかし、今回のスーパーマーケットでの実践は、ほぼ来場したお客さん全員が何かを買って帰って行った。その光景は、日常的に日々の食材を買う光景であり、食べ物という人間に必要不可欠なものであるからか資本主義的ないやらしさは無い。むしろ日本ではマイノリティであるイスラムコミュニティをお店に訪れたオーディエンスの各々が支援しようとしているような行動にも見えた。

商品を見ているのかアートを見ているのか段々分からなくなるような感覚を生むこの展示の形式は、私の通常のアートプラクティスの内容で重要だ。日常的すぎる行為(プライベート)と展覧会として他者と共有されるフォーマット(パブリック)が入り乱れる不思議な体験として、この企画は平凡な非日常的な舞台装置を出現させたのではないかと振り返る。

中島りか

Porject
Porject
Excavation of Site_Some Practices

場所の発掘_Some Practices

A new form of Platform_Thinking through art and technology
2023.6.30–7.31