逃走路としての下水道
Site:地下
Generator:施工者、排水システム、水
ビクトル・ユーゴーの小説『レ・ミゼラブル』において、警察に追われる身となった主人公ジャン・バルジャンは恋人のマリウス青年を背負ってパリ市街の下水道に逃げ込む。またアンジェイ・ワイダ監督による映画「地下水道」では、ドイツ占領下のワルシャワで武装蜂起を起こしたレジスタンスの兵士たちが地下水道をつたって脱出を試みる。ユーゴー曰く、「下水道は都市の本心である。すべてがそこに集中し互いに面を合わせる。その青ざめたる場所には、暗闇はあるが、もはや秘密は存しない。事物は各、その真の形体を保っている。もしくは少なくともその最後の形体を保っている。不潔の堆積なるがゆえに、その長所として決して他を欺かない。率直がそこに逃げ込んでいるのである」「下水道は一つの皮肉屋である。それはすべてのことをしゃべる」。フィクションにおける舞台装置としての下水道は、そこが都市機能が輩出した汚物を引き受ける地下空間であると同時に、地上にあまねく広がる監視の目を逃れるための逃走経路にもなりうるという可能性を示す。