八王子の中野上町では古い機械工場を見ることができる。「日本機械工業」の敷地には、かつての機械製糸場から受け継がれた明治時代の建物も多く残されている。それは近代の産業革命の遺産であり、機械と労働者の街として発展した中野上町の水源地でもある。機械の登場はそれまでの手工業的な生産方式を一変させ、主体的にものを作る「作者」は不要のものとなった。そして都市はマスプロダクツ〔大量生産品〕とマス〔大衆〕の生み出すポップな表層の美学に覆われていった。
だが人工的な表層もまた、時とともに、酸化、退色、風化、腐蝕によって剥離していく運命にある。こうしたオートマティックな造形作用は、ものを覆う観念を剥離させ、「人工物」が実は「自然物」であることを明らかにするのだ。中野上町では、あちこちで人間と観念の物質性が露呈している。そこには唯物論的ミュージアムが潜在している。