キリストの墓:レンヌ=ル=シャトー

The Tomb of Christ: Rennes-le-château
  • Maker
    ピエール・プランタール、ジェラール・ド・セード、ヘンリー・リンカーン、リチャード・アンドルーズ、ポー ル・シェレンバーガー、荒俣宏、ダン・ブラウ
  • Date
    1886–
  • Medium
    羊皮紙、紙幣、出版物、絵画、墓碑
  • Location
    Rue de l'Église, 11190 Rennes-le-Château, France.

ミステリーの生産は、南フランスの山村レンヌ=ル=シャトーの主要産業となっている。ミステリーの発端は、1885年、当地に赴任してきたベランジェ・ソニエール神父が、村のマグダラのマリア教会から発見した謎の羊皮紙文書、そして、神父が手にした出所不明の莫大な紙幣にある。私たちはその秘密文書をマーケットで、紙幣と交換して手に入れることができる。『レンヌ=ル=シャトーの謎』は¥4,800円+税で、『イエスの墓』は¥3,800+税だ。羊皮紙文書と紙幣という謎に包まれた2つの紙を交換する行為は、世界の深い神秘に触れる儀式なのだ。

表面的な文面の背後に隠された法則を見つけることで、その文書からは暗号文や図形や地図が現れる。そして、文書を絵画と、絵画を墓跡と、墓跡を地図と、地図を地形と対応させることで、隠された秘密が徐々に浮かび上がってくる。無関係に見えるものどうしのあいだに隠されたリンクを見つけ出し、断片的な部分から、失われた全体を復元すること。過剰に解釈する意志こそが、ミステリーを生む原動力となる。

世界が神の被造物だと信じられていた時代には、世界のあらゆるものは解読されるべきものであり、すべてのものに作者である神の意図が隠されていた。しかし近代において、世界は意味から切り離されてしまった。近代人とは、何の意図もなく偶然生まれた惑星に、何の目的もなく偶然生き残っている生物なのだ。その結果、ミステリーは、宗教的な制度から解放され、芸術的な生産物となる。私たちはキリストを自由にコピーし、その墓を自由に作ることができる。それは、宗教の民主化なのだ。ミステリーの生産は、ひとつの正しい世界を発見するのではなく、可能世界を増やしていく効果を担っている。

そして近代後期には、神の恩寵はもっぱらマーケットに注がれるようになった。神の手は、無関係なものをリンクさせ、交換していく。私たちは、マーケットだけが、人間には処理しきれない全世界の膨大な事象に目を向け、調整しているのだと信じている。人智を超えた神秘的な源泉から価格は出現するのだ。すべての商品のバーコードには、その神秘の数字が暗号化されている。