《トンネルの壁》

八王子市中野上町でのジェネラル・ミュージアム⓬:八王子市中野上町5丁目27-8

トンネルは実在しない。それは物質が取り去られた「穴」を対象化した観念にすぎない。トンネルとは、壁の「不在」そのものなのだ。中野上町の中央自動車道下のトンネルは「無」を鑑賞するための場所となっている。その壁面では「落書きは犯罪です」と印刷された張紙が環境の「美化」を訴えている。その美とは、何も描かれない壁、つまり無の保全である。その壁のあちこちには落書きを塗りつぶした白い矩形が浮かび上がっている。そうした消去跡はマーク・ロスコーの描く矩形のように、空っぽの空間を形として表象している。それはペイントの不在を示すペイントであり、無を実在させている。
「落書きは犯罪です」という張紙は100年前にアドルフ・ロースが投げかけた『装飾と罪悪』のテーマを今日の都市で再演している。「芸術はすべて、エロティックなものだ。」とロースは主張する。つまり、落書きを含め、あらゆる作品は場所への侵犯であり、そこに欲望を投影し、支配しようとするものに他ならない。
そうした外から投影された表面に逆らうように、酸化して膨張した鉄骨がトンネルの壁に露呈している。それは支持体である物質が内側から表出した反絵画となっている。