Helping Hands

Helping Hands

「両手」を展示物として、高村光太郎の墓から家、家から墓の間を往復する。

Site

染井霊園→高村光太郎旧居跡→染井霊園

Generator/Organizer

吉野俊太郎

Date

2023年7月30日(日)17:30–18:30

7月16日に予定していた「Helping Hands」は、実施者の体調不良により7月30日に変更となりました。

Access

染井霊園:東京都豊島区駒込5丁目5-1付近
高村光太郎旧居跡:東京都文京区千駄木5丁目22-8付近
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Document

《Helping Hands》

(意:介助、支援、手助け、救いの手)

 

ジム・ヘンソンによるファンタジー映画『Labyrinth』に登場する、同名の怪物からタイトルを拝借。主人公が落ちた穴の壁面に存在する無数の手の集合体で、そのいくつかが顔のような形を作り出すことで会話し、自身を「Helping Hands」と名乗った。

 


 

本作は、路上にて実施された。巣鴨駅近くに位置する染井霊園の入り口、そこから約30分かけ、千駄木の高村光太郎旧居跡まで歩き、また30分かけて戻る。これの実践者である吉野俊太郎は展示台座を模した特製の白装束を被り、両腕だけを外部に露出したまま歩行し続けた。

 

ルールとして定めた「腕を挙げ続ける」という行為は想像を超えて過酷で、暑さや疲労、血流の弱まりによる手の痺れなどをもたらす。本作ではそうして重力から逆らうことをやめてしまいたくなる手を、白装束の上部に一体化する天板が支える、あるいは右手左手が互いに相補し支える姿を想定している。右手で左手首を掴んでみたり、両手を合わせてみたりと、腕を挙げることが維持しやすい状態を探し続ける様子そのものが構成作品として成立しうると捉え、これを実践した。よって、本作ではあえて手のポージングなどはまったく決めずに、可能な限り「なってしまう」ポーズであることに努めている。

 

展示対象である手は、人体の中で最も高い位置に掲げられる部位であるほか、触覚性を要素にもつ彫刻メディアにとっても、とりわけ重要なモチーフである。彫刻家の高村光太郎が残した塑造作品《手》はその象徴とも捉えられると考え、今回は旧暦盆に合わせ2023年7月16日(日)の夕方に、高村光太郎の墓と旧居跡を手と共に往復するプランとしたが、実践者の体調不良によりやむをえず、結果7月30日(日)の実施となった。

 


 

往復1時間を想定していた本作は、結果的に30分超過して終了した。通行人に注目されるのを薄らと感じつつ、実践者が聞いた声は「何だあれ」「幽霊」「お祭り」など。顔面を布で隠した白装束は視界が悪く、間違った道へと進んでしまったことなどが原因だ。万が一道に迷ってしまった際の保険として依頼していた協力者に途中ささやかに先導され歩む姿は、さながら送り盆。夕方に行われるそれが提灯とともに行われる理由が、目印であるということを実感した。

 

注目を集めていたであろう一方、顔を隠しているからか、まったく恥ずかしさはなかった。また吉野俊太郎にとって「展示台座になる」というのは今回で3回目であるが《Plinthess》(2021)、『明るすぎます』(2023)と比較して、同じポーズを継続するという意味においてはこれまでの作品の中では最も正確に展示台座を実演したという実感がある。やはり静止を継続する、支え続けるというのは拷問になりうるほどの苦痛で、これをし続けるという事態について人体をもって描写することはできた。

 


 

かねてより思っていたことだが、あらためて、展示台座は墓と似ている。

本作を踏み台に、次回はこれをまた次の思考へとアップデートできたら、と思う。